人材戦略

Webサービス・デジタルプロダクトのUI/UXリニューアルを成功させる人材活用
「サービスが成長してきたから、そろそろ古いデザインをきれいにして、ビジネス拡大期に備えたい」などと気軽に考えていませんか?
ビジネスの拡大期において、ECやプラットフォームをはじめとしたWebサービスやデジタルプロダクトのUI/UXリニューアルは、単なるデザインの変更ではありません。Forbesに掲載されたこちらの記事によると、ユーザーエクスペリエンスの課題がビジネスに直結することを指摘しています。
一方で、ECマーケティングが2025年に行った「サイトUI/UX改善実態調査」によると、内製でのUI/UXをのリニューアルを行った場合は「成果が見えない」と回答した実務担当者52.2%を占めており、自社だけではUI/UXリニューアルを成功させることが難しいという結果が出ています。
本稿では、UI/UXリニューアルの失敗要因を紐解きつつ、成功確率を上げるためのヒントを事例を交えながら解説します。
UI/UXのリニューアルでは、何を「失敗」と考えるべきか?
まず、リニューアルにおける「失敗」の定義を明確にしましょう。「デザインが今風ではない」「なんとなく使いにくい」というのは、あくまで主観的な見栄えの感想に過ぎません。
ビジネスにおける失敗とは、以下のような指標となる数字が悪化することです。
コンバージョン(CVR)の低下: 利用者が迷い、購入や登録に至らずに離脱する。
開発コストの肥大化: 凝ったデザインにした結果、実装に時間がかかり、リリースが数ヶ月遅れる。
技術負債の蓄積: 現場が更新しにくい複雑な設計になり、その後の改修スピードが著しく落ちる。
使いやすさが損なわれ、ビジネスにマイナスのインパクトをもたらすこと。これこそがリニューアルにおける最大の失敗です。このリスクを避けるためには、単に「センスの良いデザイナー」を雇うだけでは不十分であることがわかります。
日本のプロダクト開発が抱える「UX人材」の不在
ここで、日本の人材市場が抱える構造的な問題を解説します。現在、多くの企業で「UI(ユーザーインターフェース)」と「UX(ユーザーエクスペリエンス)」が混同されている傾向があります。
UIの特徴
視覚的アプローチ:画面上のボタン、文字の形(フォント)、色、配置など、「目に見えるものすべて」
直接触れる部分:指でタップしたりマウスでクリックしたりする、操作のための物理的な仕組みを指す
一言で言うと:ユーザーが目にする「製品の見た目」
UXの特徴
体験面での心地よさ:サービスを使って「迷わなかった」「便利だった」と感じる、「使い心地の良し悪し」を考慮
心の動き:目的をスムーズに達成できたか、また使いたいと思ったかという、使った後の「感情」に重点を置く
一言で言うと:ユーザーが抱く「サービスへの印象」
参考コラム https://www.figma.com/ja-jp/resource-library/difference-between-ui-and-ux/
日本には、見た目を美しく整えるUIの専門家は多く存在しますが、ユーザビリティ視点とユーザデータに基づいてデザインを組み上げられるUX人材は、まだ十分ではありません。さらに「ビジネスゴールから逆算して、ユーザー心理と開発効率を同時に設計できるUXストラテジスト」となると、務まる人材はかなり限られており、採用難易度は飛躍的に上がります。
では、「人が採れない」という理由で、UXの専門人材が不在のままリニューアルを進めて良いのでしょうか?拡大期の企業にとってさらに問題となるのが、UIのみに注力し、「開発効率が考慮されていないデザイン」でリニューアルを進めてしまうケースです。データに基づいた改善ではないだけでなく、開発視点を欠いたデザイナーが実装難易度の高いデザインを作ってしまうと、開発現場は疲弊し、プロジェクトは停滞します。そしてスピード感のある開発を行えないことは、ビジネスチャンスの喪失にもつながるのです。
「外部企業」への依頼が、社内を空洞化させる理由
もちろん自社にノウハウがない業務を行う際、「コンサルティングやUXの制作会社等の外部企業に一括で依頼する」という選択肢もあります。しかし、拡大期の企業にとって、これは極めて慎重になるべき判断です。
外部企業に組織単位で依頼した場合、「ノウハウが全く残らない」という致命的な問題が生じます。 プロジェクトが終了して彼らが撤退した後、社内に残るのは「完成された成果物」だけです。「なぜこの設計になったのか」「ユーザーのどの課題を解決したのか」というそこに至るまでのプロセスを理解できず、自社の社員が育つ機会は奪われてしまいます。さらに、外部企業が自社事情についての理解が乏しい場合、現場の実態とかけ離れたものになってしまうリスクも孕んでいます。
プロの「個」をチームに招き入れるという戦略
「組織」に丸投げして社内を空洞化させるのではなく、高い専門性を持つ「個人のプロ」を自社のプロジェクトチームのコアメンバーとして迎え入れる。これが拡大期における最も賢明な選択です。
一流の個人エキスパートに「コーチ」としてプロジェクトに伴走してもらうことは、以下のようなメリットがあります。
思考プロセスの共有: 外部企業のような「納品して終わり」の関係ではなく、自社メンバーと共に悩み、議論することで、プロの判断基準が社内に直接伝播します。
ナレッジのインソーシング: プロが残したドキュメントや設計ルールは、そのまま社内の資産になります。若手の正社員がそのプロセスに並走することで、教育コストをかけずに「正しいUX設計」とは何かを理解することができます。

このように、プロ人材を活用はプロジェクトのスピードとノウハウ獲得という2つのメリットを享受できる手段であることがわかります。
【事例】デザインと開発をつなぐ外部人材を活用
現代アートのECプラットフォームを運営するArt of Heritage(旧トライセラ)社のケースは、この「外部のプロフェッショナル人材」の活用が開発効率の向上につながる良例です。
同社では、ブランドの世界観を保ちつつ、多様なユーザーを迷わせない「グローバル標準のUX」と、スタートアップ特有の「圧倒的な開発スピード」の両立が不可欠でした。そこで彼らが取った選択は、コンサル会社への外注でも困難な正社員採用でもなく、デザイン・エンジニアリングをつないでコミュニケーションが行える外部のエキスパートを起用することでした。
アサインされたデザイナーは、実装負荷を常に考慮しながら開発チームと密に連携し、手戻りを激減させました。さらに、将来の機能追加を容易にする「拡張性のあるルール」を構築。デザイン、開発チームのコミュニケーションの土台を整えたことで、プロジェクト終了後も社内でスピーディに開発を行える体制が整いました。
結論:リニューアルを「投資」に変えるために
Webサービスのリニューアルを検討する際、まず「そのデザインは、ユーザーの行動をどう変え、売上にどれくらい貢献できるのか?」という視点で判断を行うことが重要です。
もし、この問いに対して明確な答えを導き出せないようであれば、今行うべきなのは新たに正社員を採用してリニューアルを強行することではありません。まずは「ビジネス・デザイン・開発」の3つの視点から統合的に判断できるプロフェッショナルの知見を借りて、目的やゴールを正しく整理するところから始めるべきです。
ソレクティブは、Art of Heritage社の事例をはじめとして、UI/UX改善を行いたい企業様のために、現状のヒアリングと必要機能の明確化を行うコンサルティングを実施することで、必要人材の解像度を高めご提案を行っています。 今、貴社にはどんな「機能」が必要で、どんなチームならそれを実現できるのか? ソレクティブは、貴社がしっかりと成果を上げることができるように、課題整理から要件定義、最適な人材マッチング、そして支援中のサポートまで、プロフェッショナルな伴走を提供いたします。UI/UXリニューアルの詳細については、こちらもご覧ください。
執筆:今野 三貴